マンを勝利で飾りますが、すんなりとは勝たせてくれません。六人の
精鋭を揃えてきていたにも拘らず、一番早いドライバーが事故で入院
貰い事故のドライバーが、一時期ショックでレースが怖いと、監督に
泣き着く等々。
主人公である天野裕一は、僅差ながらチーム二番目の速さを持ち、
マシンのセットアップには、メカニックの信頼厚いドライバー。
アクシデントの結果、チーム監督してついてきた梶原が、急遽ドライブ
することに…。
当代一流の名ドライバーの華麗なるドライビングを、活写する中で、
ニッサンのR384も天野の手で快走を続けます。
サバイバルが激しさを加える中、ニッサン車だけは完調であり、他が
次々と脱落していく様は、高齋正の小説に欠かせない要素で、どの
レースでも、メインとなった会社の車両はいつも絶好調が前提です。
これは、ご都合主義と取られかねませんが、私にとっては。小気味よ
く感じる部分です。
なぜなら、最後はヒューマンドキュメント的味わいでハッピーエンドを
迎えるために、あまりにいろいろな要素を絡ませると、読者に快感を
与えることが難しくなるからでしょうね。
ミステリーにあるような最初に伏線を数多く貼っておき、クライマックス
で一挙にたたみかける方法は、筆力が有れば効果的なのでしょうが、
意外にこの手法で成功している作家は少ないんです。
高齋正が凄いのは、短いスパンの伏線が散りばめられていて、かつ、
肝腎の部分ではそれが有機的にまた効果を発揮することでしょう。
まさに、一粒で二度おいしいを実践しているのです。
読後の爽快感を求める方に、お勧めしたい一冊です。
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