でも、自前で作っているのは、スープだけなんですね。麺は「自家製」ってわざわざ書くくらいですから、麺専門店から仕入れるの普通なんでしょう。チャーシューも同じく「自家製」って麗々しく書かれている場合がありますので、これも食材の卸から仕入れているんでしょうね。
そして、極めつけは、半熟卵です。これだけは、自家製がスタンダードだと思っていたら、いつの間にか、食材屋から仕入れている方がはるかに多くなってしまいました。
考えてみれば、一日の売り上げが6万円程度として、卵を入れる注文が30杯程度だとしても30〜50個の半熟卵を均一に仕上げる必要に迫られるわけです。毎日毎日の仕込みでこの作業はかなり時間を食いますし、上手に殻が取れる卵をゆでるのは相当な熟練が必要です。
だからこそ、ここにも食材の販路が開かれてきてしまっています。
でも、素人にはそれが分からない?いいえ、しっかりと分かるのです。それは、職人が手を抜けばの話です。
ラーメンが出てきました。すぐに半熟卵を食べてみてください。かなり名の通ったラーメンチェーンクラスでも、その半熟卵は冷たいことが多いのです。ラーメンに仕上げとして載せる前に、ホンノひと手間暖めさえすれば、そんな手抜きは見破れない筈なのに、そのひと手間を惜しむからバレてしまうんですね。
それは、カレー屋の「温玉」も同じです。手作り感いっぱいのカレー屋であっても、温玉は仕入れているケースが増えてきました。冷めた「温玉」と冷蔵されていた「温玉」の差は歴然です。職人魂なんて、もう一般の食堂クラスではもう望めないのかもしれません。
それは、キューピーや味の素と言った、大規模性生産設備を持つ会社の合理化が進んだ低コストの食材攻勢の前には、いくら手作り感を前面に押し出そうが、それは所詮無駄な抵抗なんですね。
で、こうしてみていくと、結局ラーメン屋というのは、自前で用意しているのは、スープだけということになります。あと自分のスープに合った麺を外注することと、茹で加減ぐらいしか腕を振るう場所がない商売ということになりはしないかと思うのです。
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