人気が無くなってフェードアウトする人がいる一方で、今回のように自ら終局を宣言できる幸せな人もいます。
声だけを聴いていれば、吉田拓郎はまだまだ現役で通用すると思いますが、やはり大病を患ったせいもあって、その立ち姿には老いが滲み出ていました。
番組のフィナーレでは、感極まったのか、自らのギターを奏でることが出来ず、ストラップをいたずらに触っている映像は、ぐっとくるものが有りました。思い出せば、私より一世代上のフォークゲリラが新宿界隈を席巻していた時代に、新風を吹き込んだアーティストであった拓郎は、そのコード進行が斬新で、かつ、無理が有りませんでしたので、なじみ深いメロディーラインだと感じたものです。
事実、代表作の一つである「落陽」の錆の部分のコード進行は、Am Em Am と1小節ごとに変化して、この変化がとても美しく、ギターを始めたばかりのものでも、この部分の真似ができると、結構悦に入ってしまったものです。
加山雄三も引退するし、ちょうど引き際なのかもしれません。
水泳とか体操の選手たちのプレーヤーとしての寿命は短く、その後の第二の人生を考えねばなりませんが、こと歌手に関しては、特にシンガーソングらーたーとなれば、その才能が枯れず声もしっかりしてれば、寿命はかなり長いものです。現実に、70代の現役歌手は今はごまんといる時代です。ただ、現役とはいっても、過去形に近い方も含まれており、本当の現役となると、ほんの一握りです。
そんな中にあって吉田拓郎は、独特のカラーを少しも曇らせることなく、見事にゴールまで到達したわけです。
これは、ファンならずとも、大いに褒めてしかるべきだと思います。
人生50と言われた時代は過去のものとなり、いまや人生80とまで言われています。
例え、有名人でなくても、人生のゴールまで、輝いていたいものですね。
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