そして、シングル「俱に」のその歌唱法について、一言。
昔であればとっくに年寄り声になっている年齢ですが、その気配は全く感じられないのはファンにとっては朗報です。
もっとも、声の老いを感じたら、本人は潔く引退するでしょうけれど。
それはともかく、今回のシングルの歌い方は、弱音部と強音部で二種類の声を使っています。
元々、彼女のアルバムの初期は、一作ごとに歌い方を変えて、毎回ファンを幻惑させたものです。
それが、もう少し時代が下ると、曲ごとに歌唱法が変わるようになってきました。
そして、近年は、曲の中でも歌唱法を変えてきています。彼女の歌唱法はいくつかありますが、朗々と歌う・シャウトする・すぼめ気味の口からのか細めの発声・語りかけ調・音程をふらつかせる・字あまり早口・そして、極めて普通のオリジナルの発声とありますが、「俱に」はか細目の発声と朗々手前の発声で組み合わされています。
丸ごとみゆき様というファンならいざ知らず、そこそこのファンにとっては、少し食い足りない発声のように聞こえるか細さは、しかし、年を経て再度聞き直すと、これが意外や別の力を持っていたことに気付かされることが多いのです。今回のシングルもそんな部類だと思いますが、これは自分によほど自信が無ければできない冒険ではないでしょうか。
「さぁ、どう、今回の作品をあなた受け止めれるかしら。」と、挑発されるような気にされる面を彼女の作品群は持っています。
それが、曲が持つ強さと普遍性ではないかと言うのが近年の私の私的見解です。どんな風に解釈しようが、歌手は作品を発表したら、その後は、聞き手の解釈にゆだねられていきます。そこで、曲に共鳴する人がどれだけがいるかで、ヒットチャートをどれだけ上れるかの結果となって作者の元にフィードバックされるわけです。
そういったことを考えれば、歌手という職業は、よほど確固とした自分を持っていなければ務まりませんね。